取材記No.014
「酪農体験(JAなかしゅんべつ)」同行記(2017.6.14)
■なかしゅんべつ農協(別海町)とは
別海町は、北海道の道東、根室半島と知床半島の中間にある町。人口15,000人、牛の頭数11万頭で、生乳生産量日本一の酪農の町。そのうち、JA中春別は、頭数2万5千頭、組合員数169戸の酪農の農協で、生活クラブの牛肉(北海道チクレン)となる牛の赤ちゃんを育てている産地です。また「べっかいのバター屋さん」の産地でもあります。
北海道においても、担い手不足、担い手の高齢化、飼料価格の上昇、今後の酪農の先行き不安より、営農を断念する農家が増加している現状があります。
今後の担い手の確保、育成のため、2017年4月に、JA出資の「なかしゅんべつ未来牧場」を設立し、酪農体験の受け入れ、研修生の育成を始めています。
夢都里路くらぶの援農企画は、2011年から毎年3人ずつが参加。唯一の酪農企画でもあり、参加者には大変好評です。
■(株)なかしゅんべつ未来牧場が今年から酪農体験を受け入れ
搾乳牛は80頭、牛をつないで飼う「つなぎ牧舎」。搾乳は搾乳機が、搾乳牛の元に自動的に移動してきます。飼料は自動給餌される粗飼料(牧草)を主体として配合飼料(トウモロコシなどの穀物)を加えたもの。牛が食べた後、牛が食べやすいよう大きなロボット掃除機が遠くにあるえさを自動的に牛のそばに集めるなど、各所で機械化・省力化されていました。
2017年6月現在、2組の夫婦と、18才の学生(女性)の5人が研修生として研修中、職員2人と合わせて7人で牛の世話をしていました。
■子牛の幼稚園?共和育成牧場
2017年より、(株)なかしゅんべつ未来牧場の一部門となった、管内の酪農家で生まれたホルスタインを育成する牧場です。母牛の初乳を飲んで免疫力を付けた子牛たちが、育成牧場にやってきます。生後5日目という赤ちゃん牛もいました。
赤ちゃん牛に哺乳ビンでミルクをやるお手伝いをさせてもらいました。ミルクを入れるケースにななめに哺乳ビンを差し込むと待っていた子牛が強い力でごくごくと飲みます。
1週間たつ牛はもう離乳で、少しずつ牧草を食べ始めます。メスとオス別はもちろん、月例別にグループで柵に入り、育てられていました。
オス牛は、7か月、310キロで、北海道チクレンの肥育農家に出荷され、肉牛としてさらに肥育されます。ここでは、管内だけでなく、遠く府県からのメス牛の預託も受けており、夏場は広い牧草地で放牧されて育てます。メス牛は生まれて14か月で初めての受精(人工授精)をし、10か月後に出産、乳を出すようになります。
■伊藤一吉牧場で搾乳体験をしました
牛舎の規模は、平均的な搾乳牛約100頭。レールに吊るされているミルカ―(搾乳機)は、手で牛の横に移動するタイプです。まず手で少し前搾りし、熱いタオルで乳首を拭き、次にミルカ―を乳頭につけると、勢いよく乳がパイプを通ってバルククーラーの中に入っていきます。搾乳が終わると自動的にミルカ―が外れるので、その後乳頭をディッピング液で消毒。搾乳すると牛は疲れるのか、横になって休んでいました。慣れない手で絞る前搾りや、ミルカ―を4本乳頭に着ける作業はなかなか難しかった・・・
■(株)べっかい乳業興社
酪農日本一である別海町で絞った牛乳を町内で消費したいという思いで、別海町と3農協の出資で2001年に設立した牛乳・乳製品製造・販売を行う会社です。原料乳の90%は、酪農研修牧場の質の良い原乳で、この質の良い原料から、生活クラブのバター「べっかいのバター屋さん」が製造されています。
■酪農では消費者と直接つながることは難しく、実際に酪農の現場を知っている消費者は少ないことから、素牛の生産とバターで繋がった、この顔の見える関係を大事にし、毎年、少人数ではあっても地道な交流、体験を通して、「参加する人には心の応援団になってもらいたい」、「中春別という地域や、開拓の歴史を知ってもらいたい」、取組をすることで、「信頼関係を築いていきたい」という生産者の強い思いを感じることができました。(夢都里路くらぶ事務局 長谷川)